無人モデルハウスで稼ぐ

 神奈川県横須賀市に本社を置くサンエーは、太陽光発電システムの販売を主力事業としてきた会社だ。注目したいのは、2017年から、千葉県君津市を拠点に始めた住宅販売事業のユニークな仕組み。
 20年4月期に5億円に達した売上は今季7億円、来期15億に見込んでいるという。コロナショックをものとせず、今後も明るい見通しを描けるのはサンエーのモデルハウスが見学客を無人で迎え入れているからだ。
 同社は17年かた無人モデルハウスに取り組み、人と人の密接を避けるコロナ下においても、その効果を存分に発揮している。モデルハウスに希望者が自由に出入りできるようにする単純なやり方ではない。それでは、いたずらなどの安全面で不安もある。
 サンエーでは、自社で販売しているIOT(モノのインターネット)住宅システム「S-REMOS」(エス・リモス)」をモデルハウスの運営にも生かしている。独自開発したシステムで、スマートフォンにダウンロードした専用アプリを使って玄関ドアの施錠・解錠や、エアコン、証明などの家電や住宅設備を操作できるというものだ。
 この施錠・解錠機能をモデルハウスにも使うことで、見学客は入室から退室まで、営業担当者と顔を合わせることはない。サンエーの庵﨑栄社長は営業担当者を置かない狙いの背景に、若い購買層の心理を指摘する。
 「顧客ターゲットにしている20代から30代は、従来のモデルハウスで繰り広げられる積極的な営業を明らかに敬遠している。当社は大手に比べてブランド力が低いこともあり、営業攻勢を受けずに見学できる点は付加価値になると考えた」(庵﨑社長)
 住宅の説明は、間取りの各所にあるQRコードを見学客が読み取ったスマホから動画と音声で案内されるというが、それだけで成約に至るわけではない。
 庭でバーベキューや花火、モデルハウスの外が暗くなってからの食卓で家族団らん。これらはサンエーが見学客に定期的に用意するイベントだ。イベントとはいえ、その場にいるのは見学客だけ。
 あらかじめ食材や花火、ちょっとしたおつまみなどが用意されていて、見学客は家族水入らずで「家を持つ喜び」を体験できる。
 同じことを営業担当者がそばにいる状態で体験できても見学者は気兼ねしてしまい、家を所有する疑似体験の満足度は低くなる。庵﨑社長は無人モデルハウスの特徴を生かし、それが成約につながる工夫を凝らしている。
 営業2人で年間33棟販売
 モデルハウスは無人だが、見学後のやり取りや商談などを担当する営業スタッフはもちろんいる。人数はわずか2人で、モデルハウスから車で10分ほどの場所にある支店に常駐しているという。
 見学客退室し、次の組が入室するまでの間にモデルハウス内を掃除したり、バーベキューの食材を冷蔵庫に補充したりもする。サンエーの営業社員は在宅勤務ではないが、この仕組みはそのままテレワークに使える。仕組みもさることながら、採算面も魅力だ。
 この無人方式は顧客が心ゆくまで見学、体験できるため、購買につながる確率が高いという。しかもモデルハウスで待機する必要がないため、効率もいい。サンエーの営業2人が年間で獲得する契約件数は直近の20年4月期で1人当たり16・5棟。「大手の場合、年間8棟の契約を獲得すれば優秀者として表彰されるレベル」(庵﨑社長)なのでかなり多い。
 しかし、庵﨑社長は「今期は前期までと同じことをしていては、コロナの状況次第では影響を受ける可能性がある。ネットやSNSから無人モデルハウスへの送客を強化するなどして見学客を増やしていきたい」と気を引き締める。営業、特にファーストコンタクトは顧客との対面ありきではなくていい場合もある。むしろものであれサービスであれ、実際に利用してもらうことに注力し、営業担当者は控えている方がうまくいくこともある。新規開拓のやり方を抜本的に見直したい。
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